●家づくりは、山に1本の苗木を植えることから始まります。
地ならしした山肌に苗木を植える作業は、職人さんが急な斜面を登り降りして行います。ただ穴を掘り植えるだけでなく、しっかり根付くよう根の部分をやさしく広げて植える丁寧な作業。中腰での作業は体の負担も大きく、大変な重労働です。
植林後、最低5年は苗木が雑草に埋もれたり他の樹木に絡まれたりしないよう、下草を刈る世話を続け木の成長を見守ります。12~13年経つと、不要な枝を切り落とし木の成長を促す「枝打ち」の作業が始まります。枝打ちのタイミングは、樹種や気候、土地状態によりさまざま。状況を熟練の職人さんがしっかりと見極め、木を傷つけないよう細心の注意を払いながら作業を行います。
●植林から25年。間伐を経てさらに木を育てます。
植林から25年が経ち背丈が伸びてくると「間伐(かんばつ)」が行われます。間伐とは、混み合う森林の一部を伐採する作業。木を太くまっすぐ伸ばし良質な木材に仕上げる重要な作業。間伐を怠ると栄養が行き渡らず、細くやせた木ばかりになります。品質が落ちるだけでなく、根が広がらないため倒木するおそれもあるのです。
作業は成長の悪い木や曲がった木を中心に、職人さんが1本1本バランスを見て伐採をします。すると木と木の間隔が広くなり、太陽光が地面まで差し込みます。こうして手入れをした山は、木の成長が促され、明るく風通しがよくなり、すがすがしい姿に変化していきます。
●植林から50年。いよいよ伐採が行われます。
苗木を植えてから50年、いよいよ伐採(ばっさい)の時期になりました。伐採には職人さんの高い技術が求められます。木の根元にチェーンソーを入れ、斜面の上方に向かって倒すのが基本。倒れた木が他の樹木を傷つけないよう、正確な方向に倒していきます。
伐採はもともと、木の内部に含まれる水分量が少ない冬に行われていました。夏に伐採すると水分量が多く、乾燥に時間がかかるためです。現在では乾燥技術が格段に進歩し、1年を通して伐採が行われています。夏も冬も厳しい重労働を経て、職人さんが50年の年月をかけて育てた木。その恵みを大切に受け取り、スモリの家づくりがさらに続いていきます。
●木の乾燥は、家の精度を高めるとても重要な工程。
東北の山で伐採された木は、東北の製材工場に運ばれ、製材・乾燥の工程に入ります。中でも乾燥は、家づくりの中でも特に大切な工程。せっかく精密に木を刻んでも、乾燥が不十分だと木が収縮し寸法が狂ってしまうからです。気密性・断熱性を重視するスモリの家づくりは「乾燥の精度」にかかっているといっても過言ではありません。そのため、乾燥は木の性質を熟知した専門の職人さんが行います。
スモリの家ではこの乾燥工程を、樹皮やおがくずを燃料にした「蒸気乾燥」で行っています。化石燃料を使わず木材の無駄を出さず地球環境にもやさしい、ゼロエミッション型システムを採用しています。
●木材を集成・プレカット・パネル化し、家を建てる準備が完了。
乾燥工程を経た木材は「集成・プレカット」工程へと進みます。かつて集成材は輸入材しかありませんでしたが、スモリの家では製材所と共同で地場の国産材の利用拡大に取り組み、平成10年頃から全国でいち早く、地場の国産集成材を使い始めました。かつて使い道のなかった間伐材も集成材に利用され、国産材の需要拡大に貢献しています。
プレカット加工では、コンピュータに入力したデータに基づき、一棟ごとの設計図に合わせ集成材をカット。加工作業そのものは機械が行いますが、最終的にチェックするのは職人さんの目。不具合が見つかった場合も、職人さんが丁寧に補修します。
この工程の中で、銀我パネルやパネル状にしたサッシの組立も済ませておきます。そうすることで、後の建築現場作業がとてもスピーディになります。
●スモリの家づくり、建て方は1日で完了します。
50年を経た家づくりのリレーも、いよいよ終盤。家を建てる職人さんがアンカー的存在となり、スモリの家を形づくっていきます。基礎工事の後に構造部材を組み上げる建て方は、通常上棟まで数日必要です。しかしスモリの家の建て方はわずか1日で完了します。
その理由とメリットは大きく3つあります。1つは、加工をすべて工場で行うため一定した品質の管理ができること。2つめは、雨の多い日本で良い乾燥状態を保ったまま家を建てられ、現場作業の短期化にもつながること。3つめは、現場でゴミや騒音を出し近隣に迷惑をかけないようにするためです。こうした配慮のもと、現場の職人さんが工程を具現化していきます。
●職人さんの技とチームワークが冴える、ある建築現場の1日。
朝8時、基礎工事を終えた現場で建て方がスタート。棟梁(とうりょう)を中心に4~5名の職人さんが工事を進めます。まずは土台と床をクレーンを使って組み立てます。構造材はプレカット工場で精密に加工されているため、ノミやカンナで作業することはほとんどありません。壁パネルの施工も、銀我パネルをはじめ工場で先につくられているため、現場での作業も大幅に短縮。夕方4時過ぎには、屋根の骨組みまで完了します。
ここまでの作業を1日で終わらせるのは、簡単ではありません。緻密なタイムスケジュール管理やスムーズな状況判断、息のあったチームワーク、そして何より職人さんの「正確さ」が物を言います。これらがあって、早くて精度の高い、匠の技の家がつくられるのです。。
●林業の循環・しあわせの循環となる家づくりを目指す。
こうして建てられるスモリの家。もうお分かりの通り、東北の山で育った木を東北の工場で加工し、東北の地で家を建てています。木は、その土地の気候風土や環境に耐える力を宿すといわれています。50年をかけ育った東北の木は、頑丈な住まいとなり長期に渡り安心で健やかな暮らしに貢献してくれるでしょう。
また、東北の木を使うことで国産材の需要を拡大させ、若い成長期の木を継続し育てることでCO2を削減し、地球温暖化防止に貢献することも目指しています。これからの時代は、生産・消費・廃棄のサイクルではなく、持続可能な社会の創造が求められます。森を守ることが職人さんの技術継承につながり、地球環境にも役立つ。そして林業が循環することで、職人さんもお施主様も、すべての人々がしあわせになる。そんな「しあわせの循環」となる家づくりを、スモリの家は目指しています。